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掲載日:25.02.05

キリンと三菱重工/海老名物流センターで「自動ピッキングソリューション」が稼働

 キリンビバレッジとキリングループロジスティクスは、東日本支社湘南支店海老名物流センター(神奈川・海老名市)において、三菱重工業と三菱ロジスネクストが開発した「自動ピッキングソリューション」の稼働を開始し、2024年12月12日に、自動化稼働セレモニーを開きました。

〇AGFとAGVで作業効率を向上
 キリングループは、2018年夏に猛暑による飲料需要の拡大に加え、天災による物流の寸断に伴い出荷調整を行ったことを期に、物流を経営課題として捉え、供給体制を見直して強化を図りました。その一環として庫内自動化へ取り組み、2021年に三菱重工業と組み、自動化構想の検討を開始しました。22年11月から23年6月までの間、三菱重工の共創空間・Yokohama Hardtech Hubで実証実験を行い、ピッキングエリアの自動化により生産性が42%向上しました。そして今回の「自動ピッキングソリューション」導入に至りました。
 導入された海老名物流センターは2010年、プロロジスパーク海老名にBTS型倉庫として入居以来、キリングループの関東エリア基幹センターを担っています。キリンビバレッジ湘南工場(神奈川・高座郡寒川町)をはじめ近隣工場から、1日数千箱単位で商品が大量に入荷されるため、荷役作業が大きな課題となっていました。
 キリングループロジスティクスの安藤弘之社長は「1箱10kgの段ボール、それ以上の重量の商品もあり、ピッキング時の上げ下ろしによる作業員の腰痛問題が年々深刻化してきた」と語ります。同センターでは作業員の高齢化問題も深刻化したこともあり、自動化導入の拠点に選択されました。
 1階に新設された自動化ソリューションエリアには、キリン専用にカスタマイズされた三菱ロジスネクスト製AGF(無人フォークリフト)「プラッターオート」シリーズ4台のほか、AGV(無人搬送車)11台、パレタイザー1台を導入しました。
 WMSのオーダー指示により、パレタイザーが必要な荷物を店舗別パレット上に積み付けます。積み付けが完了次第、AGVがパレットを積載した棚をAGFエリアまで運び出します。続いて、AGFが荷物を載せたパレットを出荷専用ラックまで自動搬送します。これまで作業者自身が作業効率を考えながら行っていたピッキング作業の自動化・知能化が実現しました。2025年1月以降は、夜間の無人空間での作業を中心に、段階的に出荷量を増やしていきます。
 今回導入されたハード群は、三菱重工が開発したWCS「ΣSynX」(シグマシンクス)によって最適化、統合制御されたものです。人と機械を同調・協調させるための標準プラットフォームとして「物流の2024年問題」の課題解決を図ります。現在は、自動化・省人化、安全性や物流品質向上に留まっていますが、ΣSynXで熟練作業者のノウハウを実装することで、新人作業員でも作業性の平準化が可能になります。
 キリンホールディングス岩崎昭良常務執行役員は、「将来の人手不足問題を解決するため、三菱重工業さんと共に物流自動化構想を進めていきたい」と話し、ピッキング工程の川上・川下となるトラックへのAGF自動積み付けソリューションの実験を進め、26年3月をメドに実用化させていくことを示しました。
 また、三菱ロジスネクストは、ΣSynXの誘導方式などの技術を取り込んだ新たな自動化技術「SynfoX」(シンフォックス)搭載AGFによる生産性向上の提案を強化していきたいとしています。


AGVエリア、奥に見えるのが補充品ラック

パレタイザーが積付けした荷物を
AGVがAGFエリアまで搬送

待機していたAGFが
パレットごと荷物を受け取る

AGFが完成品ラック(239パレット収納)に
荷物を格納して自動ピッキングが完了