日本通運は、国際物流総合展(9月10日~13日開催)の会場ブースで「持続可能な物流の実現に向けたソリューション」を提案しました。
●テレロボフォーク
「テレロボフォーク」は、既存のフォークリフトに、レバー、ハンドル、ペダルを制御するアクチュエータと、カメラや高精度センサLiDARなどを後付けすることで、自律遠隔制御対応を可能としました。自律制御、遠隔操縦、人の搭乗による運転の3つの操作モードを簡単に切り替えることができます。NXとNECの共創プロジェクトにより開発されたもので、物流課題の解決とともに未来へ向けた新たな価値を提案しました。
会場では、NXのブースから通路を挟んだNECのブースにコックピットを設置。パイロットが無人フォーク「テレロボフォーク」を操り、遠隔操作でリアルタイムに稼働するデモを披露しました。パイロットの指示通り、フォークリフトのハンドラーやレバーが動き、フォーククリストの爪がパレットに自動で刺さり、安定した搬送作業を実現しました。遠隔操作により、安全かつ効率的に稼働させることがデモンストレーションで証明されました。
●テレロボハンドラー
「テレロボハンドラー」もNXとNECの共創プロジェクトにより開発されたものです。ロボットアームを活用して複数のパレット、カゴ台車への仕分け、隙間ない積み付け・積み替えなどを、離れた場所から作業することが可能です。
物流現場ではいろいろな大きさ・形状の貨物に対してさまざまな作業工程が発生するため、全自動ロボットでは100%の性能を発揮することが困難です。NXグループは、現場で「人同士が作業をしている」かのような柔軟性を持つ「テレロボハンドラー」の活用を提案しました。
会場では、テレロボフォークが搬送した商品の入庫、積み付け、ピッキングなど様々な倉庫作業を披露しました。テレロボフォークと同様に、NECブース内のコックピットからの遠隔操作で、どの段ボールをどこに移動させるか、カゴ台車に隙間なく積む指示を出します。
積付け指示が終わると、パレットの上部に取り付けたカメラで商品までの距離を認識し、カゴ台車までの適切な距離を自動計算します。この時、NECが開発したAIロボットタスクプランニングが状況に応じて、必要手順やロボット動作を自ら考えて実行します。ハンドラーが次々と段ボールをカゴ台車に積み込む中、空きスペースに効率よく積めるよう、段ボールの向きを変えたり、別の場所に置き直したりすることもできます。
今回のデモンストレーションを通して、NXグループが目指すのは単なる遠隔操作ロボットのソリューション提供ではなく、その先にある新たな価値と可能性であるとアピールしていました。
●誰にもやさしい倉庫
日本通運は、先進的なロジスティクスロボットや作業補助機器の導入と職場環境の整備を通じて、これまで倉庫で働くことが困難であった人々の障壁を取り除くことを目指す「誰にもやさしい倉庫(NX Universal Harmonious Work Warehouse)」プロジェクトを8月に開始しています。
同プロジェクトの第1フェーズでは、倉庫内における移動の負担を軽減し、歩行が困難な方々を含めて誰もが倉庫作業に従事できる倉庫を目指しています。同社は、WHILL社が既に展開している近距離モビリティ「C2」を埼玉支店加須倉庫に試験導入しました。AGV(自動誘導車)、AMR(自律移動ロボット)などの無人搬送機と連携させ、歩行困難者がピッキング作業などの倉庫内作業を行うことを可能としました。しかし、ピッキング作業を行う際は、商品を入れるカゴを片手で押さえながら、もう片方の手で機体のコントローラーを動かす必要があり、作業者への操作負担などの課題を抱えていました。
そこで、WHILLト共同で「倉庫内作業専用モビリティ」を開発し、試作品を国際物流総合展のNXブースで初披露しました。
新型モビリティは、座面を左右に90°回転させることで乗り降りが楽になり、無理のない姿勢で作業することができます。座面は20cmの昇降機能が備わり、高い棚への作業も楽にできます。車両前方にアームを装着し両手が自由に使えるようになるほか、作業しやすい位置に自由にカゴを移動して固定することもできます。左右にスライドすることにより、取り下ろしの際の負担を軽減します。狭い通路でも回転できるように設計しています。
日本通運は新型モビリティの特許をすでに取得しており、25年度中の開発を経て製品化を進め、量産化による外販や自社倉庫での活用を進めていく計画です。
テレロボフォーク
次工程エリアまで荷物を自動搬送
テレロボハンドラー
NECブース内のコックピットから遠隔操作
WHILL社製「C2」。作業中にAGVが追走
新たに開発したモビリティ
シート昇降機能や回転機能が搭載