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掲載日:19.05.08

物流効率化のためのテクノロジー活用について考える:第25回
グーグルマップ・ゼンリン以外の選択肢-「地図のウィキペディア」とは?-

 本コラムでは、「デジタル地図」に関してグーグルと対抗し得る日本企業であるゼンリンについて紹介してきましたが、デジタル地図を提供しているのはグーグルとゼンリンだけではなく、他にも選択肢があります。今回はそのような選択肢の中から、特に無償で提供されているものの代表例として、国土地理院の地図および「地図のウィキペディア」とも呼ばれるオープンストリートマップについてご紹介したいと思います。

1.国土地理院地図
 公的機関である国土地理院が、デジタル地図をweb上で公開しています。この国土地理院の地図を利用する場合には、下記のサイトにアクセスします。

 http://maps.gsi.go.jp/help/

 このサイトの「地理院地図(入口はこちら)」というボタンをクリックすると、地図が表示されます。
 このデジタル地図を公開している国土地理院は公的機関ですから、地図の利用に関する制限は少なく、多くの場合、出典を明記すれば引用等を行うことができます。
 また、単に地図を画像として引用するだけでなく、たとえば本コラムで以前ゼンリン社の地図の機能として紹介した、住所データの地図上へのプロットについて、本年の3月に追加されたところです。
 この機能を使う場合、ゼンリン社の地図と同様に、以下のような住所データを含むcsvファイルを用意します。csvファイルとは、データとデータの区切りをカンマ(,)で示したデータです。なお、図表1のデータは東京都の区役所・市役所等の住所リストです。

図表1 地図プロットに用いるcsvファイルの例(東京都の役所所在地リスト/一部)


 このファイルを読み込ませ、地図上にプロットさせた結果は以下のようになります。物流事業者の場合、この機能を配達先マップの作成に利用できるかもしれません。

図表2 国土地理院地図の住所プロット機能の使用例

出典)国土地理院


2.オープンストリートマップ
 国土地理院の地図は当然、日本の地図に限定されますが、世界中の様々な場所に関する地図が無償で提供する、オープンストリートマップと呼ばれるプロジェクトもあります。このオープンストリートマップは「地図のウィキペディア」とも呼ばれ、2004年にイギリスのスティーブ・コーストによって立ち上げられました。このオープンストリートマップは以下のアドレスからアクセスできます。

https://openstreetmap.jp/

 このオープンストリートマップでは、地図の元データはボランティアによって提供されています。この場合のボランティアとは完全な個人の場合もあれば、かなりの規模を持つ組織の場合もあります。個人のボランティアとは、たとえば地図の作成を趣味とする人達です。そのような人達が自分で収集した地図データをオープンストリートマップ上に投稿することで、グーグルマップやゼンリンの地図とはまた違った情報が地図に付加されていきます(たとえば、バリアフリー施設に関する情報等です)。
 また、組織として参加しているボランティアの例としては、Facebook社が挙げられます。Facebook社は、衛星写真からAIによって自動的に道路地図を作成する技術等によって、オープンストリートマップに貢献しているとのことです。

3.物流事業者と地図ツール
 物流事業者にとって地図ツールの重要性は非常に高いと思われますので、使用できる地図ツールの選択肢を増やしておくことが望ましいと思われます。今回ご紹介したような非商用の地図ツールも、そのような選択肢の一つになるかもしれません。また、業務の性格上、道路情報等を広い範囲で収集できる可能性が高い物流事業者がオープンストリートマップのような地図作成プロジェクトに参加するようになれば、地図の精度向上や付帯情報の充実化に大きく貢献できることも考えられます。もちろん、その貢献は、最終的には物流事業者のメリットとして帰ってくることも期待できるのではないでしょうか。