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連載:
掲載日:16.07.07

「データ分析」を武器として物流を変える:第8回
お手軽かつ効果絶大なわりに、「今一つ知られていない」グラフの書き方で差をつける~「散布図」でワンランク上の分析を行う~(その1)

 「棒」と「線」と「円」・・・・・・この3つに共通するものは何でしょうか?答えはグラフの種類です。我々は小学校ぐらいの頃には棒グラフ、線グラフ(一般には折れ線グラフ)、円グラフの書き方を学びます。しかし、このグラフというものには他にも種類があり、その中には大学生になっても専門によっては習わない人もいるのに、実際にはお手軽に作れ、かつビジネスにおいて非常に役立つものが存在します。そのようなグラフの一つが「散布図」です。今回からは、この「散布図」について取り上げたいと思います。

1.散布図とは

 ウィキペディアでは、散布図を「縦軸、横軸に2項目の量や大きさ等を対応させ、データを点でプロットしたもの」としています。この文章だけだとどうも分かりにくいですが、実際には散布図とは極めてシンプルなもので、たとえば例として良く使われるのは身長と体重の関係を示した散布図です。
 まず、ある10人について、その身長と体重が図表1のようになっていたとします。一般に「身長が高い人ほど体重は重くなりがち」という傾向にあることが予想され、この表でもそのような傾向が示されているようには思われますが、今一つ分かりづらいと言えます。


図表1 身長と体重に関するデータ



 ところが、この図表1のデータについて、横軸を身長、縦軸を体重として、散布図を作成してみた図表2をみると、この「身長が高い人ほど体重が重い」という傾向がかなりはっきり示されます。


図表2 散布図(図表1の身長と体重に関するデータを使用)



 このように、2種類のデータ、それも対になったデータ(たとえば同一人物における身長と体重等)の関係を見るのに役立つのが散布図なのです。
 この散布図は、お手軽に作れると言いましたが、もちろん手書きで作ろうと思うとかなり面倒です。図表1のデータを例にするなら、まずAさんは横軸で身長165㎝のところから上にいって体重65㎏にあたるポイントに点を打って・・・・・・という作業を10回繰りかえすことになります。また、図表1のデータならば10回繰り返せば良いですが、100人分の同様のデータで散布図を作るとしたら気が遠くなります。
それにも関わらず、散布図が簡単に作れると言ったのは、表計算ソフトのエクセルに、この散布図を作成する機能が用意されているからです。エクセルのグラフ作成のコマンド一覧の画面を図表3に示しました。


図表3 エクセルにおけるグラフ作成コマンドの画面



 この散布図コマンドで、図表1の表のうち、身長と体重の2列を元データにしてエクセルで散布図を作成したのが、図表2のグラフです。

2.散布図をどう活用するか

 この散布図の優れた点は、上記の身長と体重の例のように、2種類のデータの関係性を確認しやすいところにあります。そのような特徴を持つこの散布図をビジネスで生かせるのは、やはり2種類のデータの関係を分かりやすく示すことで何らかのメリットが得られる場面においてです。

 たとえば、筆者自身の経験として、通販家具の組み立てサービスにおける料金改定コンサルティングにおいて、この散布図を使用したことがありました。通販家具を注文されたことのある方ならご存知と思いますが、通販家具の多くは組み立て式であり、その組立ては注文者自身が行うのが原則です。しかし、組立てに自信がない、あるいは組み立てている時間が無いといった人のために、配送した物流事業者が有料で組立ても請け負うサービスがあります。そして、この組立てサービスは「ベッドなら~円だが、学習机なら~円」というように、家具によって料金が異なるのが普通です。

 私は、この通販家具の組み立てサービスを請け負っている物流事業者から、「どうも組立ての手間と料金が対応していないと思われるため、料金体系の見直しをしてほしい」という依頼を受けました。そこで私は、この通販で販売している家具のいくつかを実際に組立て、その結果、「部品が多い家具ほど組立て時間がかかる」傾向を確認しました。これは当たり前かもしれませんが、その通販における従来の料金体系は「サイズが大きい家具ほど組立て料金が高い」というものになっており、これが組立ての手間と料金が対応していないという感覚の原因になっていたと思われます。たとえば2段ベッドはサイズが大きいために組立料金が高いのですが、そのベッドはパイプを単純に組み合わせてマットを置けば完成するものでした。それに対して、小さな書斎机等は組立て料金が安いものの、実際には引出しが多数あるため、この引き出しを一つずつ組立てることで作業時間が非常に長いものになっていたのです。

 そこで私は実際に組立てを行った結果に基づき、図表4のように、横軸に家具の部品数、縦軸にその家具の組み立て時間をプロットした散布図を作成して、通販会社にお見せしました。その結果、通販会社にも納得していただき、部品数が多い家具ほど組立て料金を高く設定し直してもらえることになりました。


図表4 通販会社に示した散布図(イメージ)



 なお、QC(品質管理)について学ばれた方なら、いわゆる「QC7つ道具」の一つが、この散布図であるのをご存知と思います。この「QC7つ道具」の中で散布図は一般に「2つのデータの関係をみる」ためのツールとされており、これは言い換えれば、散布図が2つのデータの関係をみるツールとしては代表的なものと位置づけられているということと言えるかもしれません。
 次回からは、この散布図の活用方法や、活用する際の注意点などについて整理していきたいと思います。

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