物流技術コーナー:
掲載日:16.06.14
ワイヤレス給電について
ワイヤレス給電技術は、スマートホンなどの電子機器を充電用のコードを接続せずに充電できることで注目されていますが、今年の4月に開催されたTECHNO-FRONTIER2016ではフォークリフトや無人搬送車(AGV)への給電装置や走行中の電気自動車への給電の研究などが紹介されており、今後は物流分野での活用も期待されています。そこで 今回は、このワイヤレス給電の仕組みと物流への活用についてご紹介します。
■ワイヤレス給電の仕組み
ワイヤレス給電には主に以下の3つの方式があります。
①電磁誘導方式
コイル内の磁界変化によりコイルに電流が発生する現象を電磁誘導と呼びます。この現象を用いて給電側コイルに電流を流した時に発生する磁界により受電側コイルに電力を発生させる方式です。
②磁気共鳴方式
同じ周波数で振動する物体間で片方が振動するともう一方も振動する現象を共振と呼びます。この現象を用いて給電側のコイルに通電し磁界を発生させ受電側コイルに電磁的に同じ周波数の共振を発生させて電力を発生させるのが磁気共鳴方式です。電磁誘導方式に比べ長い距離での給電が可能というメリットがある反面、伝送電力が低いことが課題になっています。
③電波方式
給電側から電波を発して受電側で受けた電波のエネルギーを変換し電力を発生させる方式です。上記の①②は給電と受電を近距離間で行うのに対し、この方式は遠距離間の給電が可能なため、宇宙で太陽光発電した電力を地上に送るなどの遠距離での給電用途で研究されています。
図1.ワイヤレス給電の方式
出典:ワイヤレス給電技術(同志社大学 知的システムデザイン研究室 第152回 月例発表会資料)
■物流分野への活用
TECHNO-FRONTIER2016(メカトロニクス・エレクトロニクス分野の展示会 今年4月開催)ではワイヤレス給電の集中展示エリアが設けられ、駐車中の電気自動車(EV)やフォークリフトのバッテリーへの充電やAGVへの給電(荷物の積み下ろしなどでAGVが止まる箇所に給電装置を設置し、停車時に充電することで、バッテリー交換なしでAGVをエンドレスに稼働させるというもの)の展示がなされていました。駐車中EVなどへの給電では技術が確立しておりすでに製品化がなされています。電磁場による人体への影響も法令等の基準値に抑えており安全とのことです。
また、走行中の電気自動車への給電についてのポスター展示もありました(㈱ダイヘンと奈良先端科学技術大学院大学との共同研究)。当該技術はほぼ確立され、既に実用化できる段階にほぼ達しているのですが、道路に給電用のコイルを埋め込む必要がありそのコストが膨大であることが最大の課題になっているとのことでした。トラックなどの大型車両についても技術的な問題はクリアしており、課題はインフラ整備費用(国としての方針)とのことです。
図2.電気自動車のワイヤレス給電
出典:株式会社ダイヘン資料
図3.フォークリフト向け非接触充電システム
丸印の部分で給電している。送電側の装置はキャスター付きで移動できる。
出典:株式会社ダイフク資料(丸印追記)
■走行中の車両への給電の実用化
走行中の車両への給電について、海外では、2013年に韓国で路線バスの運行において実用化され、2015年にイギリスで電気自動車用充電レーンの設置が発表されるなど、すでに実施されています。日本でも国を挙げて早期に実施されることが望まれます。
前述のAGVとの組み合わせのように自動運転とワイヤレス給電は相性の良い技術と思われます。トラックの自動運転技術開発も進展していますので、自動運転トラックが24時間ノンストップで稼働する未来がすぐ目の前に来ているのかもしれません。
≪参考資料≫
・ワイヤレス給電技術【同志社大学 知的システムデザイン研究室 第152回 月例発表会資料】(2014年4月 上南遼平、池上久典)
・平成26年度 特許出願技術動向調査報告書 非接触給電関連技術 (平成27年3月 特許庁)
・engadget日本版記事
http://japanese.engadget.com/2015/08/17/ev/